地元ライター発信!壱岐旅ブログ
NEW一棟貸し宿が誕生。勝本浦でペットと楽しく泊まれる宿。
「THE 離泊 壱岐 風の御宿」
かつて「風もと-かざもと-」と呼ばれていたというここ勝本。まち並みの一角に、そんな風の名が付いた宿がオープンした。
明治時代の古民家をリノベーションして造られたこの宿は、広々としたキッチンからプライベートサウナまで付いた特別仕様。
また、宿から歩いて数mの距離にあるritomaru cafe 大久保本店では、釜戸で炊いたご飯と、壱岐ならではの食材を使った美味しい料理が堪能できる。
勝本浦の美しいまち並みに溶け込むこの2店舗の魅力を体感するため、運営元の株式会社りとまる代表の奥村さんに話しを伺った。
掲載日:2025年02月26日
ライター:みつこ
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土間で繋がる中と外
宿の玄関を開けると、広々とした土間が奥の中庭にまで続いている。
その横の小上がりスペースは、なんの気無しにスッと腰を下ろして、思わず話しの花が咲く、なんてこともありそうな居心地の良い空間である。
街側の玄関から、海側の中庭まで細長い造りになっているこの宿では、室内でありながらペットと一緒に走り回ることもできそうだ。
滞在者に届ける「懐かしさ」と「特別感」
取材していてずっと感じていた「懐かしい」という気持ち。
それはきっと宿に生まれ変わったこの家自体が持つ温かさなのだと感じた。趣のある階段や、立派な柱、漆喰で塗られた壁などが空間全体のバランスを整わせ、アクセントのように美しい家具や家電が丁寧に配置されている。
「昔来たことあったっけ?」と親近感を漂わせながらも、置かれている調度品ひとつひとつには非日常の特別感を感じる。
そしてさらにこの宿の魅力を引き立たせているのは、窓から見えるまち並みや、漁港や漁船、遠く空の上を飛ぶトンビの鳴き声。
これら全てがこの宿でしか味わえない独特の空間をつくっている。
広々としたキッチン、お風呂など暮らすように泊まれる工夫も
この宿にどんな時間が流れていくのだろう
株式会社りとまる代表の奥村さんはこう話してくれた。
「宿の中で寛ぎながらも、ペットのわんちゃんが元気に走り回る。中庭に繋がるドアを開けておけば、庭から土間を通ってわんちゃんが行ったり来たり。玄関から入った瞬間にその絵が浮かんだんですよね」
壱岐島内各町に一棟貸しの宿を運営している奥村さんは、家を宿へリノベーションする際、その家が持っている雰囲気や表情を大事にしているそう。全く新しく生まれ変わらせるのではなく、修繕をして元の魅力を引き出すイメージでどんな宿にするのか決めていくそうだ。
「ひとつひとつ手探りです。それでも、快適さとお客様が喜んでもらえるかという大事なことはブレずに持っていますね」
なるほど、筆者がこの宿に入った瞬間に感じた「懐かしい」という親近感は、この家の持っていた表情と、それを崩すことなく手掛けた人の想いが作り出したものだったのかと、なぜか妙に腑に落ちた。
壱岐の美食を古民家カフェで堪能する
ritomaru cafe 大久保本店では、大きな釜戸で炊いた熱々のご飯と、壱岐牛やマグロなどを楽しめる。
壱岐牛のメンチカツは、お肉の味がしっかりと口に広がる。添えられた京都の粒マスタードをヨコワのカツ(※取材時)に付けると、ふわっとした甘さが広がりクセになる。
単品で思わず追加した、壱岐黄金コロッケは、じゃがいもの味が濃厚でソースなしで思わず唸るほど美味しかった。(壱岐黄金についてはリンクをチェック)
さらに注目したいのは壱岐島内の美味しいものを使ったメニューがほとんどということ。
こだわりのフレンチトーストでは、川井豆腐さんの豆乳を漬け込み、イチノコーヒーさんのエスプレッソソースをかけるなど、まるで壱岐の美味しいもの巡りをしているかのように楽しむことができる。
ここは「美味しいものが食べられる」だけじゃない。
店内の装飾品を細かく見てみてほしい。壁に飾られた昭和世代のグッズは、古民家の雰囲気に馴染み独特の存在感を放ち、食事をするあなたの目も楽しませてくれるだろう。
暮らすように泊まる
今回この2店舗を取材し、改めて「懐かしい」とは何なのかを考えた。
育った環境や生まれ故郷に感じる、あの勝手に湧き出てくる感情。
しかし、そうでない場所でも、こうして妙に懐かしい気持ちに胸が高鳴る時があるが、なぜなのだろう。
それはきっと、昔どこかで見たことのある光景と重なり、その時の安心感が蘇るからなのだろうと思う。が、それが分かっていてもなお、この感情の真意を掴めていない。
でも、筆者はこの「懐かしい」が好きだ。
この宿にも、カフェにもそれは漂っていて、滞在する者を安心させることだろう。
まるで、昔に暮らしていたかのような。
「ただいま」と「おかえり」が聞こえるような。
そんな、暮らすように泊まる古民家宿に、ぜひ一度あなたも滞在してみてはいかがだろう。