地元ライター発信!壱岐旅ブログ
麦焼酎発祥のルーツは離島にあった?お酒好きにこそ飲んでもらいたい「壱岐焼酎」を堪能してみた
日本各地でさまざまなお酒が造られていますが、九州といえば焼酎が有名ですよね。芋・麦・米・そば・黒糖とさまざまな原材料で造られています。
麦焼酎の生産地といえば大分県が知られていますが、麦焼酎の発祥が九州本土ではなく、長崎県の離島・壱岐島にあることを知っていましたか?
1年中、何かしらの理由を探してはお酒を楽しんでいる私ですが、1番好きなお酒の楽しみ方は、「旅とお酒と食」を組み合わせることです。実際にその土地に行って、地元の食とお酒を味わうと、なんだか一味違うような気がするんです。
そこで今回は、壱岐島の飲食店に実際に伺い、島に来たら飲んでもらいたい壱岐焼酎5銘柄を、壱岐牛やアコヤ貝の貝柱など壱岐の食材と合わせてご紹介します。
掲載日:2022年12月22日
ライター:高田のぞみ
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壱岐7蔵と壱岐焼酎について
壱岐の麦焼酎の歴史は古く、約500年前に遡ります。
厳しい年貢で米がほとんど残らず、年貢の対象外であった麦を育て「どぶろく」を造って楽しんでいましたが、造り置きが出来なかったので、麦を主原料にし中国から伝来した蒸留技術を用いて、麦焼酎を造り始めたと言われています。
壱岐島には現在「天の川酒造、山の守酒造、玄海酒造、重家酒造、猿川酒造、壱岐の華酒造、壱岐の蔵酒造」の7つの蔵があり、それぞれ味わいの違う壱岐焼酎を造っています。
壱岐焼酎を名乗るためには、「米麹を使用すること、米麹と大麦の割合が1:2であること、島内で採れた水を使用し、島内で造られ貯蔵されたもの」などの条件があり、これらを満たさなければ「壱岐焼酎」という名称を使うことは出来ないのです。
そしてこの「壱岐焼酎」ですが、シャンパーニュ地方の「シャンパン」、スコットランドの「スコッチウイスキー」などと同じように、世界的に保護されているって知っていましたか?日本にある4カ所の焼酎生産地域は、世界貿易機関の規定によりそのブランド価値が守られており、壱岐焼酎もその1つです。
世界的に有名な銘柄と肩を並べている焼酎が、この島で造られているなんて凄いですよね!私も壱岐島に移住してからは壱岐焼酎を日常的に飲むようになり、今ではすっかり壱岐焼酎の虜になってしまいました。
“麦焼酎発祥の地”で壱岐焼酎と壱岐の食材を使った料理を堪能してみた
今回お伺いしたのは、郷ノ浦町にある「おつくり家 壱岐 旨勘」さん。壱岐7蔵のお酒が常時揃っています。私の友人や周りの方からオススメされていたお店で、いつか行ってみたいなと思っていました。
入り口には店名を記した提灯が1つあるだけで、隠れ家的な印象のお店です。店内にはカウンター席と個室があり、普段使いから会食まで利用出来る感じでした。女将さんや店員さんの笑顔や接客も丁寧で、取材で伺った時も、料理の説明や壱岐の話などを色々と話してくださり、とても楽しく過ごすことが出来ました。
壱岐焼酎を堪能する前に、まずは地魚の刺身盛り合わせとアコヤ貝(真珠貝)の天ぷらを注文しました。刺身の盛り合わせは仕入れの関係もあるため、前日までの要予約です。
刺身盛りに添えてある、鮮やかなグリーンが美しい柚子胡椒は、なんと自家製なんです。壱岐では、刺身にワサビではなく一味唐辛子や柚子胡椒を付けて食べることが多いのですが、九州特有の甘い醤油と唐辛子の鋭い辛味が、ブリなどの脂ののった魚に本当に合うんです。
香りに惹かれそのまま一口食べると、しっかりとしたコショウ(唐辛子)の辛味が舌を刺激すると同時に、フレッシュで爽やかな柚子の香りが口と鼻いっぱいに広がります。刺身に少し付けると、柑橘の爽やかさが魚の旨みを引き立てます。あまりの美味しさに、追加で頼んでしまうほどでした。こちらの柚子胡椒は販売をしていないため、旨勘さんに行かないと食べられない味です。
真珠貝であるアコヤ貝の貝柱は、酢味噌がけの刺身と天ぷらにしていただきました。アコヤ貝は壱岐で初めて食べたのですが、ギュッと詰まった旨みに驚きました。生でも旨みが強いですが、火を通すと甘味と貝の旨みが出るので、炊き込みご飯や卵焼きにしても美味しいです。
美味しい壱岐の食を楽しんだら壱岐焼酎を味わいたいということで、まず始めに、玄海酒造「壱岐ゴールド」、重家酒造「ちんぐ 黒麹」、壱岐の島酒造「壱岐の島」の3銘柄を選んでみました。壱岐島内でもよく飲まれており、島内外で人気の焼酎です。
1杯目は「壱岐ゴールド」。オーク樽で熟成させた焼酎で、島外でも人気の高い焼酎です。壱岐焼酎を知らなくても、このラベルを見た方はいるのではないでしょうか。22度と少し低めなのでロックで飲んでみました。熟成酒なので薄く色が付いており、オーク樽の香りを感じます。壱岐焼酎は他の麦焼酎より甘味を感じるのですが、熟成されることでよりまろやかに感じました。個人的には、おでんや煮込み・煮付けなどの暖かくほっこりした料理と合わせたいなと思いました。
2杯目は「ちんぐ 黒麹」。黒麹を使用し、伝統的な製法で造られた焼酎です。今回はスッキリ飲めるソーダ割りにしてみました。麦の香ばしい香りは1杯目より強く、甘みや飲み口も厚みを感じ、しっかりとしている印象があります。壱岐焼酎はソーダ割りにすると、鼻から麦の香りが軽やかに抜けて行くので、個人的に1番好きな飲み方です。が、ちんぐ黒麹は厚みのある焼酎なので、お湯割りにして香りを楽しみながらのんびりと楽しむのもオススメな飲み方です。
そして3杯目、「壱岐の島」。“究極の食中酒”をコンセプトに造られた壱岐焼酎だそうです。麦の香りを感じながらもするりとした飲み口で、どんな料理でも合います。ちなみに私が初めて飲んだ壱岐焼酎がこの「壱岐の島」だったのですが、香りと飲み口に、麦焼酎の印象が大きく変わったのを今でも覚えています。ソーダ割りに少しレモンを絞ったものを、普段は良く飲んでいます。
新鮮なお刺身と壱岐焼酎を堪能したあとは、やっぱり食べたいのは「壱岐牛」。年間約1000頭しか出荷されない幻の牛です。ミネラル豊富な牧草を食べ生育された壱岐牛は、肉質は柔らかく、脂がのっています。ステーキ・焼肉・しゃぶしゃぶ・すき焼きとどんな食べ方でも美味しいのですが、今回はローストビーフをいただきました。
ローストビーフはしっかりとした食感のイメージでしたが、しっとり柔らかで肉の甘みも感じられます。この柔らかさは壱岐牛だからこそなのかなと思いました。ガーリックチップと一緒に食べるとニンニクの香りで食欲が刺激されます。
ここで4杯目、山の守酒造「山桜」をいただきます。
「山桜」は超音波を加え熟成させた焼酎で、爽やかな香りの中にほんのりと甘みを感じます。これまで飲んだ3銘柄より飲み口はスッとしており、軽い感じで飲めました。爽やかで軽い感じなので、さっぱりとしたおつまみと合わせやすいなと思いました。名前に桜が入っているので、春先の晴れた空の下、花を見ながら楽しむのも素敵ですね。
色々と壱岐の食を楽しんできましたが、まだ少しつまみたいなと思ったので、にんにくの天ぷらを追加してみました。
熱が加わりホッコリしたにんにくは、お酒のあてにピッタリですね。にんにくの芽と髭が付いていたのですが、サクサク食感でとても良いアクセントになっています。塩とアオサで食べると、スナック感覚でつまめるのも嬉しいですね。
お腹も満たされてきたので最後に1杯、猿川酒造「円円(まろまろ)」をいただきます。こちらも超音波熟成をしており、飲み口のまろやかさから“円円(まろまろ)”と名付けられています。味わいはまろやかですが、香ばしい麦の香りはしっかりと感じます。和食にはもちろんですが、エスニック・アジア料理にも合いそうだなと思いました。
みなさんもぜひ「壱岐焼酎」で乾杯!
ここまで壱岐焼酎と壱岐の食を堪能してきた私ですが、実は昔から麦焼酎が苦手でした。飲み方や銘柄もあったのだと思いますが、麦の香りとアルコール感を強く感じるところが苦手で、ずっと避けていました。移住前はビールや日本酒を好んで飲み、焼酎はもっぱら芋焼酎派、ということで麦焼酎はほとんど飲まずに過ごしていました。
ですが、「壱岐焼酎」と出会って、苦手だった麦焼酎の印象が大きく変わりました。米麹が使われていることもあり、今まで飲んだ麦焼酎より甘みを感じ、ふっくらとした香りが口と鼻に広がっていくその美味しさに、本当に麦焼酎?と驚きました。また味わいや香りなどは銘柄によって変わり、日本酒のように料理に合わせながら、種類や飲み方を変えて楽しむことが出来るのも、今までの麦焼酎のイメージとは大きく違っていました。
壱岐焼酎は7蔵合わせて120商品ほどあり、蔵や銘柄によって味や風味が違います。バリエーションがとても豊かな焼酎ですので、きっと皆さんのお気に入りの「壱岐焼酎」と出会えるのではないかなと思います。
壱岐島に来たら、ぜひ壱岐焼酎と豊かな壱岐の食を堪能してみてくださいね。