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壱岐発祥の言葉「春一番」。江戸時代に漁民が恐れた強風の歴史と教訓
今、壱岐の大ニュースといえば、部員全21人が島出身の【壱岐高校・野球部】!!
21世紀枠で、第97回選抜高校野球大会に初の甲子園出場を決め、壱岐島に『春一番』のごとく旋風を巻き起こしています。憧れの聖地でも新しい風を吹かせることを全島民が応援しています。
春先に吹く強い南風「春一番」。この言葉の発祥地、実は長崎県の壱岐島なんです。
安政6年(1859年)の旧暦2月13日、壱岐島の郷ノ浦町(現在の壱岐市)の漁師たちが、長崎県五島沖で漁に出ていた際、春の強い突風に見舞われ、53人全員が遭難するという悲しい出来事が起きました。この事故をきっかけに、郷ノ浦町元居地区では春の初めに吹く強い南風を「春一番」と呼ぶようになったのです。昭和62年(1987年)には、この出来事を伝えるために、郷ノ浦港近くの元居公園に船をかたどった「春一番の塔」が建てられました。
掲載日:2025年01月29日
ライター:田口有香
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「春一番」の語源は壱岐島
今では気象用語として広く知られる「春一番」という言葉。その語源は、長崎県壱岐島にあります。壱岐では、早春に吹く南風を「春一」と呼び、漁師たちが恐れる風として知られていました。この風が去ると春の訪れを告げるとされていましたが、同時に自然の脅威を伴うものでした。特に1859年(安政6年)に壱岐の漁民たちがこの風に襲われ、多くの命が失われた悲劇が「春一番」という言葉の起源として伝えられています。
「春一番の塔」と慰霊碑
壱岐島では、この悲劇を忘れないため、昭和62年(1987年)に「春一番の塔」が郷ノ浦港近くの元居公園に建てられました。この塔は船を模したデザインで、海とともに生きる壱岐の人々の思いを象徴しています。また、その近くには遭難した漁師たちを供養する慰霊碑もあり、訪れる人々に自然の力を敬う大切さを伝えています。郷ノ浦港フェリーターミナルから徒歩5分ほどとアクセスが良く、観光の途中で立ち寄りやすい場所です。
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対岸の弁天崎公園にあるK's【カフェ】
「春一番の塔」を訪れた後は、対岸にある弁天崎公園にあるK's【カフェ】でひと休みするのもおすすめです。心地よい海風とともにリフレッシュできます。島の果物を使ったドリンクやこだわりのコーヒー、手作りスイーツを楽しむことができます。カフェからは美しい海を眺めながら、ゆったりとした時間を過ごすことができるので、散策の合間にぴったりです。
Cafe&雑貨「K’s」のインスタグラム「春一番」の背景にある教訓
当時の漁師たちは「春一」の風を恐れながらも、それがもたらす豊かな漁場の恩恵を受けて生活していました。1859年の悲劇では、延縄漁に出た多くの漁船が強風と高波に巻き込まれ、53名もの漁師が命を落としました。このエピソードは、「春一番の海難記」として現在も地元に語り継がれています。「春一番」という言葉が春の訪れを感じさせると同時に、自然の厳しさを忘れないための教訓でもあることを再認識させてくれます。
壱岐を訪れたら感じてほしい「春一番」の歴史
壱岐島を訪れる際には、「春一番の塔」とその歴史に触れることで、自然とともに生きてきた島の人々の思いを感じてみてはいかがでしょうか。
元居地区では毎年、旧暦2月13日(2025年は3月12日)に漁船をすべて停泊させ、慰霊祭が行われています。壱岐島に伝わるこの「春一番」の話は、春の風にまつわる深い歴史と想いを今に伝えています。
また、この歴史を知ることで、春一番という言葉に新たな深みを感じられるはずです。郷ノ浦港周辺には他にも魅力的な観光スポットが点在しているので、散策を楽しみながら「春一番」の歴史をたどる旅をぜひ計画してみてください。
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現代の漁師が集う漁協内にあるレストラン
春一番の塔から歩いて5分の「かもめの朝ごはん」。毎朝競りで活気づく、漁港内のレストランです。地元の新鮮野菜のお刺身やアジフライなどの定食メニューが豊富です。土日のバイキングは島ならではのお野菜をふんだんに使ったお惣菜が食べられます。お土産用に干物なども販売しています。
「かもめの朝ごはん」の詳細はこちらから