聖母宮大祭
聖母宮(しょうもぐう)は壱岐の北西部、勝本町一帯を守護し神功皇后(じんぐうこうごう)を祀る創建1300年以上の歴史深い神社です。
毎年10月10日から14日まで行われる聖母宮大祭を取材し、大祭の流れや見どころをレポートしました。祭りの由来や歴史について、宮司の川久保さんに詳しく伺いました!
10月10日 『十日祭(とおかまつり)』 13:00~ 御神事 聖母宮にて
10月13日 宵祭 18:00~ 御旅所
10月14日 船競争 13:00~ 御旅所にて神事後、 勝本郵便局前周辺が船競争のスタート地点
創建1300年以上、聖母宮の由縁
奈良時代に創建された島内有数の古社で、神功皇后の三韓出兵が創建の起源です。"勝本"の地名はもともと神功皇后が名付けた"風本(かざもと)"に由来しているといわれています。西門(表門)とお社周りの石垣は豊臣秀吉の朝鮮出兵の際に加藤清正が、裏門は肥前鍋島直茂が寄進したものです。
拝殿は極彩色の装飾に彩られた美しい造り、境内にはパラオから寄進された巨大なシャコガイの手水鉢があり、見どころたくさんの神社です。
また聖母宮の近くには神功皇后が三韓出兵の際に乗った馬の蹄跡だと言われる馬蹄石(ばていせき)があります。この場所で三韓の方向を見つめ気合を入れた際に、乗っていた馬にもその気合が伝わり、馬蹄を乗せていた石に穴が開いたと伝えられています。
毎年10月10日から14日【聖母宮大祭】
9月中旬から11月にかけて島内の神社では「例祭」や「神迎祭(かみむかえさい)」があり、ほぼ毎日どこかの神社で「祭り」が行われ神楽が奉納されています。
その中でも最も大きな祭りの一つが【聖母宮大祭】です。毎年10月10日~14日にかけて行われ、寛文5年(1665年)から現在まで約350年続くお祭りです。
10日『十日祭(とおかまつり)』:神社で神事が行われた後、神輿(みこし)が御神幸船(ごじんこうせん)に乗って御旅所(おたびしょ)にご移動。
11日~12日『日供祭(にっくさい)』:朝夕に神輿にお供えを捧げて、御祀りする。
13日『宵祭(よいまつり)』:壱岐大神楽奉奏
14日『例大祭』:船競争(通称フナグロ)
※写真は大祭時ではなく、聖母宮で行われた祭りの御神楽奉納の写真です。
いよいよ祭りの始まり「十日祭」
十日祭。午後から聖母宮にて神事が始まります。その後、神功皇后、応神・仲哀天皇の御神体を神輿に移し、船に神輿を乗せます。神輿をのせた御乗船(ごじょうせん)二隻の他に、先導する「御鉾船(おほこせん)」、御乗船を引っ張る「御曳船(おひきせん)」、神輿が橋渡しされる際の「御橋船(おはしせん)」と「御囃子船(おはやしせん)」があります。
全ての船は港を右周りで3巡し、天ヶ原から陸に上がり、神輿は御旅所へ向かいます。御旅所へ着くと、お供え物をさしあげ、無事御旅所に到着したことを神様に報告します。
ひもうり(ひまわり)といって日が昇って沈むのに倣って、祭りごとやめでたいときは右回り、そして数字は陽数(奇数)と決まっているため、港を右方向に、3回周ります。
※写真提供:川久保匡勝宮司
祭り期間中で最もにぎわう「宵祭」
13日の夜は御旅所で『宵祭』が行われます。
御旅所の迄では法被を着た氏子さんたちが振る舞い酒を提供し、薄暗くなるにつれて、近所から人が集まってきます。
翌日の例大祭の安全、また海上安全、大漁満足、五穀奉納をお祈りして、壱岐大神楽が奉奏がされます。
中でも人気の演目は「餅まき」!!お供え物のお餅やお菓子を宮司が投げる演目で、福を授かろうと争奪戦スタートで大盛り上がり!!
大人も子どもも関係なく、宮司さんの手から投げられるお供えを取り合うのが、楽しいんです。
最後には「あんたそんだけしか拾ってないと?」と言って、たくさんもらった人がおすそ分けしてくれました。
祭りのフィナーレ船競争~出発前~
14日はいよいよ最終日『例大祭』、祭りのフィナーレです。
13時より御旅所にて神事が始まります。神事の後、この祭りの一番の特徴である船競争(ふなぐろ)です。
西暦200年、神功皇后が戦に勝って壱岐に凱旋した時に二艘の船で競走したのが「船競争」の始まりだと言われています。
御旅所から対岸の勝本郵便局前周辺が船競争のスタート地点です。スタート30分ほど前から地元の和太鼓グループの風舞組(かざまいぐみ)による太鼓が始まり、お酒がふるまわれ徐々に見物する人も増えてきます。
※スタートを見たい方は郵便局の前、ゴールする瞬間を見たい方は御旅所前がおすすめです。
御旅所からさらし、ふんどしに身を包み、頭と腕にハチマキを巻いた男性たちが出てきます。腕のハチマキには聖母宮のお守りが縫い込まれています。参加者は当番町の方や近所の希望者で、この日のために1か月ほど前から和船を漕ぐ練習をしているそう。
海にある和船を漕いで、赤組、白組共にスタート地点に移動します。乗船するのは船をこぐ人が4人、長い竹の竿を持って指揮をとる水竿(みさお)が1人です。そして白の船に神職が乗り、赤の船に神職の重さと同じ体重の石を乗せます。一番体重の軽い神職が乗船するのが習わしだそうです。
フィナーレ船競争~いよいよ出発~
スタートの前に長さ2mほどの青竹で岸壁をたたき音を出すことで、対岸のゴール地点にもうすぐ出発することを知らせます。
2隻の船が岸から数メートル先のスタート地点に同時に到着するとスタートですが、1回でスタートが決まることはなく、3回もしくは5回目でスタートするのが通例です。スタートすると「エイサー、エイサー」と掛け声を合わせながら、スピードを挙げて御旅所まで白(一の舟)が勝てば豊作。赤(の舟)が勝てば大漁と占われます。
競争が終わると勝った舟に御幣が渡され、陸路にて宮司や氏子、巫女が太鼓や笛などのお囃子を鳴らしてにぎやかに町中を行脚しながら、神輿が還御されます。氏子たちは家の前に出て、神興が来ると手を合わせて迎えます。
西暦200年から続く祭り、一見の価値あり!!
【聖母宮大祭】は西暦200年から続く祭りで、一見の価値ありです。
10月10日から14日までの聖母宮大祭、15日の漁船パレード、この地でしか見ることが出来ない貴重なイベントとなっております。是非、この時期に合わせてご来島ください。
聖母宮宮司、川久保さんはSNSで例祭や季節の行事に関する投稿を行ったり、観光客の方が来られた際には社殿へ案内し聖母宮の歴史について紹介されています。たまたま例祭など祭りの時に来られても中へ案内し、神楽をお見せすることもあるんだそうです。
「少しでも神社を知ってもらえるきっかけになれば」、「門戸は広くしてありますので、いつでもお訪ねください」と川久保宮司はお話しくださいました。
また聖母宮の他にも、勝本浦には多くの貴重な歴史・文化遺産があります。ガイドがまちを案内する『勝本歴史まち歩き体験』が人気です。
Column
こちらも必見!!漁船パレード
毎年聖母宮大祭の翌日、10月15日正午くらいに行進曲が響き渡る中、漁船パレードが始まります。一隻また一隻、大漁旗を掲げて港を出発、馬場先前の大瀬戸で隊列を整えながら待機を始めます。先頭から辰の島の前あたりまでずらっと5・60隻ほどが揃うと、いよいよパレードがスタート!!勝本湾内を順番に猛スピードでぐるぐると周る様子は迫力満点!!大漁旗もカラフルで、鯛やマグロなどいろいろなデザインがあって楽しいです。
1時間ほどで終了し、それぞれの停泊場所へ戻っていきます。